第6話「パパ、開業届って何?」── 開業届・扶養・学生の税金
第6話「パパ、開業届って何?」
ユヅがノートPCの画面を覗き込みながら、ため息をついた。
ブログ始めたいんだけどさ、”収益が出たら確定申告が必要”って書いてあるんだよね……
私も高校になったらバイトしたいけど、税金ってかかるの?
お、二人とも動き出してるじゃん。いい質問だね
でも高校生が稼いだら、パパの扶養から外れるって聞いたことがあって……
そこ、みんな怖がるところだよね。でも実は、正しく知れば怖くない。前回”株式会社じぶん”の話をしたでしょ? 今日はその”設立届”の話をしよう
開業届とは何か
設立届って、会社作るの?
いや、会社じゃなくて”個人事業主”になるだけ。その届出が”開業届”っていうんだ
なんか難しそう……
紙1枚だよ。名前と住所と事業内容を書いて税務署に出すだけ。5分で書ける。ネットでも出せる
え、そんなに簡単なの?
しかも無料。で、これを出すと”青色申告”っていう仕組みが使えるようになる
青色申告……聞いたことはある
青色申告をすると、最大65万円の控除が受けられるんだ
65万円? それって所得から引いてもらえるってこと?
そう。たとえば年間100万円稼いだとして、経費が10万円、青色申告特別控除が65万円なら、課税される所得は25万円になる
紙1枚出すだけで65万円引ける……出さない理由なくない?
逆に出さないと白色申告になる。罰則はないけど、控除は10万円だけ。差は55万円
それ、知らないだけで大損してる人いそう
たくさんいるよ。だから”知っている”って、それだけで価値があるんだ

扶養の壁 ── 178万・130万の正体【2026年最新】
でもさ、そもそも私が稼いだら扶養外れるんでしょ? それが一番怖いんだけど
じゃあ”扶養の壁”を正確に知ろう。よく聞く数字が2つある。178万円と130万円
なんで2つあるの?
管轄が違うんだ。178万円は”所得税”の壁、130万円は”社会保険”の壁
何が違うの?
178万を超えると、パパの所得税で扶養控除が使えなくなる。つまりパパの税金が増える。130万を超えると、ユヅ自身が健康保険と年金を自分で払わないといけなくなる。ただし2026年4月からは、130万の判定が残業代を除外した労働契約ベースに変わったから、少し柔軟になったよ
130万のほうがヤバいね
そう。で、ここからが大事。この178万とか130万って、”所得”の話なんだ。”収入”じゃなくて
……何が違うの?
収入は入ってきた金額そのもの。所得は、そこから経費と控除を引いた後の金額
あ! じゃあ青色申告の65万円控除を使ったら……
そう。たとえばユヅがブログで年間100万円稼いだとする
100万!? そんなに稼げるかわかんないけど
仮の話ね。収入100万円、経費が10万円、青色申告特別控除が65万円。所得は25万円。178万の壁どころか、余裕で扶養内
え……開業届を出したほうが扶養に残りやすいの?
そういうこと。知らないと”稼いだら扶養外れる”って怖がって動けない。でも正しい仕組みを知れば、しっかり稼ぎながら扶養内にいられる
へぇ〜。知ってるだけで安心感が全然違うね

バイトと事業、税金の計算が違う
じゃあ私は? 高校生になったらバイトしたいんだけど
バイトの場合は計算が少し違うんだ。バイト代は”給与所得”になる
給与所得?
会社からもらう給料には”給与所得控除”っていう自動的な控除がある。最低でも55万円。で、それに基礎控除を足す。2026年はこれが大幅に引き上げられて、バイト代が年178万円以下なら所得税ゼロになったんだ
178万……月に約15万円か。高校生のバイトならまず届かないね
そうだね。でもここで面白い比較ができる。同じ金額を稼ぐのでも、”バイト”と”事業”で有利さが違うんだ
どう違うの?
たとえば年200万稼いだとする。バイトなら給与所得控除78万と基礎控除58万を引いて、課税所得は64万円。でも事業なら、経費50万と青色控除65万と基礎控除58万を引けるから、課税所得は27万円。同じ200万稼いでも、課税所得が半分以下になるんだ
ってことは、事業のほうが”使える武器”が多い?
そういうこと。バイトは控除が自動で決まってる。事業は自分で経費を管理する分、自由度が高い
私、高校入ったらバイトじゃなくて物販やろうかな
キヨらしいな

家事按分 ── 生活費を経費にする具体例
前回、生活費は原価って話だったけど、実際どのくらい経費にできるの?
いい質問。”家事按分”っていう考え方を使うんだ。生活費のうち、事業で使った割合だけ経費にできる
割合ってどうやって決めるの?
具体例で見てみよう。まず家賃。月10万円で、自宅の一部を施術室と作業スペースに使ってる。面積で計算して、事業使用が20%なら月2万円が経費になる
通信費は?
スマホやネット回線、月1万円。予約受付やブログ更新に使ってる分を50%とすると、月5千円が経費
電気代は?
月の電気代のうち、事業で使う時間や部屋の割合で按分する。たとえば30%なら、電気代が月1万円なら3千円が経費
パパ、リビングで仕事してるのって按分のためだったの?
……違います。リビングが落ち着くからです
まあ理由はどうあれ、事業で使ってる事実があれば按分できるんでしょ?
そう。大事なのは”事実に基づいて合理的に計算すること”。適当にやると税務調査で否認されるからね

「株式会社じぶん」の設立手順
よし、わかった。で、具体的に何をすればいいの?
株式会社じぶんの設立手順は4つだけ
ステップ1、開業届を出す。税務署に行ってもいいし、”freee開業”っていう無料のサービスを使えばスマホでも作れる
ネットでできるのはありがたい
ステップ2、青色申告承認申請書を一緒に出す。開業届と同時に出せるから、忘れずにセットで出すこと。これを出し忘れると、その年は白色申告になっちゃう
セットで出す。メモした
ステップ3、帳簿をつける。青色申告するには日々の収支を記録する必要がある。でも会計アプリを使えば簡単。freeeとかマネーフォワードとか
アプリでできるならなんとかなりそう
ステップ4、確定申告をする。これは年に1回、2月〜3月にやる。1年間の収支をまとめて税務署に報告するだけ
4つだけ? 思ったより少ない
でもさ、高校生でも開業届って出せるの?
年齢制限はないよ。意思があれば誰でも出せる
中学生は?
未成年は親の同意があればできる。でも大事なのは順番。まず”事業にする中身”を先に作ること。届出はその後でいい
中身が先、届出は後
そう。ブログを始めて、記事を書いて、収益が出始めたら届出を出す。最初の一歩は”発信すること”だよ

知っているだけで差がつく
ママがキッチンからお茶を持ってきた。
パパの話、長かったけど、つまり”知ってるだけで得する手続き”があるってことだよね
……ママ、また一言でまとめたね
紙1枚で65万円。コスパ最強だね
……私、まずブログ開設する。WordPress、パパに教えてもらっていい?
もちろん
私は高校入ったら物販やってみたい。で、開業届出す
二人とも、未来を見据えてるな
キヨがノートを閉じながら言った。
パパ。”株式会社じぶん”の設立って、お金じゃなくて知識が資本なんだね
……キヨ、中学生でそれ言うか
私だって気づいてたし!
ママが笑いながらお茶を注いだ。
まあ、気づいた時が一番早い時だよ
